陸の漁り火

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   なんの感情も読み取れず、魚や烏賊の目のようで、人形とも違う恐怖があった。そいつが話した暗闇の黒い目は、こんな感じなのかもしれないと思った。  ──帰り道、俺はふと廃屋に目をやった。そこには、いくつもの青い光がぽつりぽつりと浮いていた。家の中にじゃない、外にだ。  建物を取り囲むように青白い光がおぼろげに、遊んでいるみたいにふらふらと浮かんでいた。  俺は思わず引き気味に小さく叫びはあげたけれど、不思議と怖くは無かった。  いや違う。怖いという感情を押しつぶされているような、麻痺させられているような。水中にいるみたいにふわふわとしている。  あの青い光はなんなんだ。あの廃屋に何がある?  ふと、俺は気がついた。あいつは青い光とは言わず、青い炎と言ったことに──それに気付いたときには、俺はすでに廃屋の扉を開いていた。  暗闇のなか、青白い影が俺を手招きする。その後ろには、あいつがいた。 「なあ。なんでお前は選ばれたの?」 [さあ……。ただ、青い炎が選んだからだと言われたよ] 「そうか」  おまえも選ばれたんだよ。  そんな声が聞こえて、俺は深淵に墜ちた。  ──今日も、誰かがあの家に足を踏み入れる。  誰が弾かれて、誰が選ばれるのか。それは誰にも解らない。  きっと、ゆらゆらと揺れるあの青い炎だけが知っている。   終
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