0人が本棚に入れています
本棚に追加
兎に角、彼が消えた。
勿論、
ネットの配信者が消える事などは、
日常茶飯事。
彼らの多くは、
ネットに関する知識が
未熟な所からスタートして、
自己顕示しようとするから、
大抵はアンチに叩かれて、何度か挫折する。
それでも、
それを消化してまた復活できる者だけが
生き残っていく。
けれども、弾き語りの配信者達は、
少し事情が違う様に思える。
彼らは楽器ができるという事で、
最初から少しイニシアティブを持っている。
超初心者でディスられる者もいるが、
逆に技術を教えてもらって、
いつの間にか仲良くなっていたりもする。
彼はどちらかと言うと前者で、
かなりの高等レベルの
テクニックの持ち主で、
かつ、声も
何か印象に残る切ない声だったから、
その界隈では一目置かれた存在だった。
なにより、
彼の自作の曲には独特の世界観があって、
マニアックなリスナーには
根強い人気があった。
にもかかわらず、
彼の配信は過疎っていた。
彼は、リスナーのコメントに
反応しないのだ。
そして、同じ曲を繰り返し練習する。
勿論、コメントに反応しないのだから、
リクエストに応える事などほとんど皆無だ。
いくら音楽を聴きに来ると言っても、
配信サイトのリスナー達は、
何らかの交流を求めている。
反応が無いなら、
プロの楽曲を
ダウンロードして聴いても同じだ。
だから、
数人の常連が時間を見つけては、
入れ替わり聴きには来るが
賑わいはしない。
最初のコメントを投稿しよう!