第1章

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  「今日は、京大で 来月の合同ライブの打ち合わせやから、 三時には京大の門に集合やで。」 先輩からLINEが入った。 昼に学食で同じ学部の友達と別れた後、 何時もならアパートに帰ってから 地下鉄でバイト先に向うのだけれども、 自転車で京大を回ってから、 バイト先の四条に行く事にした。  鴨川は、 京大から北に上のぼって下賀茂神社の所で 西に上る鴨川と東に上る高野川に別れる。  普段は、 私の大学からは鴨川を下るのだけれども、 御蔭橋から出町柳の辺りの紅葉が綺麗だと、 何時かネットで見た覚えがあったので、 下賀茂神社で東に折れ込んで 高野川を下った。  西の河川敷の遊歩道を下りながら 対岸を見れば、 街路樹が紅葉していて、 コンクリート造りの味気ない建物を隠して 評判通り綺麗に色づいている。 その風景を見た後、 出町柳の駅前に掛かっている橋の通りを 超えると公園がある。 そこで立ち止まって振り返ると、 紅葉越しに比叡山が遠くに見える。 「うわっ、ネットで見た写真と同じだ。」 と思ったけれども、 この時期の京都では 紅葉なんて当たり前に見れるから、 ここが特に綺麗だとは思えなかった。 「曲を創れる人は、 ここで感動する人なんだろうなぁ。」 と、軽音に入ったものの コピーしかできない自分と、 自作をどんどん創り出す友達を比べて、 切なくなったのも 少しは紅葉のせいだったかもしれない。
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