0人が本棚に入れています
本棚に追加
その時、
車の音と川のせせらぎと
色々な音が混ざった中から、
アルペジオの優しい音が
聴こえた様な気がした。
「どこだろう?」
辺りを見回すと、
川沿いのベンチに
独りギターを弾いているのが見えた。
近寄って行くと、
音が止まって男性が振り返った。
「君もギターを弾くの?」
背中のギターを見て彼が言った。
自転車に乗せるのが怖くて、
背中にギターを掛けていたのを
改めて指摘されると、
なんだか照れ臭かった。
「それ、クラッシックギターですか?」
彼の音と似ていると思って、
ひょっとしてを期待して音の主を探したが、
その人の声と口調は、
私の知っている彼とは明らかに違った。
でも、一つわかった事があった。
彼はフォークソングやJ POP のコピーや、
そういう曲調の
オリジナルを弾いていたから、
フォークギターを使っているものと
思い込んでいたけど、
その音は将にクラッシックギターの
それだった。
フォークギターに
ナイロン弦を貼って
弾いている人もいるけれど、
あのテクニックはひょっとしたら、
クラッシックのミュージシャン
だったかもしれない。
それなら、
いくらライブハウスや
その関係のミュージシャンに尋ねても
彼が見つからないのも不自然じゃない。
それに気が付いた
少し音楽の知識が増えた自分に
感心はしたが、
また彼を探す範囲が広くなって、
気が遠くなる気がした。
最初のコメントを投稿しよう!