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飲み込んだ音は、思ったより大きかったらしい。それまでぼんやりとしていた春は、驚いたようにこちらを向いた。私の手の中に大福が無いことを確認すると、手首を掴み、そして。
キスをした。
優しくて甘い味がした。触れただけだったはずなのに、それは数分のように思えた。いつもよりずっと強い眼差しで春は私を見つめていた。
「俺は」
私は。
「この詩みたいな風景の中で」
馬鹿みたいに甘い味のした。
「お前としたキスを忘れない」
君としたキスを忘れない。
「お前を愛している」
桜の花びらが踊った。
薄紅の雪の降る、この桜の木の下で私たちは愛を誓う。巡り巡ってまた春が来たら、次もその次もずっと先も、こうして二人で確かめ合う。
「私も君を、愛している」
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