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その日はあいにくの雨だった――――。
あいにく?
あの会社に居なくて済むし、そもそも花見なんていうイベントがなくなるかもしれない。ラッキーといえばラッキーなの?
会社は好きじゃないし、新人のわたしにとって花見というイベントは苦痛でしかない。
『おーい、短大卒』
そう呼ばれることに慣れてしまって、それが名前だと錯覚してしまうほど。
咲川琴美。それがわたしの名前なのに、どうしてだろう。少し、わたしはおかしくなっているのかもしれない。
新人で短大卒で仕事が出来ないと決めつけられてしまったわたしは、こうして花見会場の場所取りを押し付けられてしまった。
たった一人、重い荷物を運び終わったのは昼を過ぎたあたり。空腹すぎて広げたブルーシートに座った。
その途端に降り出した強い雨に、昼食も買いに行けない。
花見が始まるのは早くても午後六時。お弁当が到着するまで耐えられるだろうか。いや、弁当が届いたとしても食べられるかどうかわからない。
だって、わたしは短大卒なんだから。
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