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「柳瀬くんはどうしてそこまでするの? だって、わたしは同僚だけど。会社では……」
「ライバルにもなりうる、ですよね」
「え?」
「かつて俺も言いました」
だから、これでおあいこ。そう言って柳瀬くんが笑った。笑うところ初めて見たかも。
「ライバルなら、弱っているところを蹴落としたくはありません。殴るくらい勢いのある咲川さんと戦いたいです」
「どうしてそんなに優しいのよ」
一瞬、静かになった。
相変わらずの雨音が耳を塞いだかのよう。桜まで落ちてしまいそうな勢いに、少し不安になった時だった。
「好きだからです」
両肩を掴まれて真剣な眼差しで、柳瀬くんが言う。
「熱、ある?」
「本気ですよ」
どうやら本気の告白らしい。
思考が追いつかなくてぼんやりと彼を眺めていたら、ドンっとさっきと同じ音が後ろで聞こえた。
桜ドンだ。もう慣れた。いや、慣れたのか?
「ちゃんと聞いてくれますか?」
「は、はい」
柳瀬くんの迫力に負けて、わたしは敬語で返事をしてしまう。
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