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ホットコーヒーを飲んだり、唐揚げ棒を食べたりしている間も無口。でも、そろそろ時間が気になる。
こんな場所に拘束して遅刻したなんてことになったら、責められるのは多分わたし。
「柳瀬くん、本当にそろそろ帰らないと午後の業務に遅れる」
「帰れません」
いやにはっきりと言う。
帰れないって、上司連中に何かを頼まれたのかな。いや、柳瀬くんに雑務を頼むことはないか。
「雨、やみそうもないし。早く行った方がいいよ」
「死にたいって……」
「え?」
「死にたいなんて嘘でも言ってしまうほど、咲川さんは参ってるんじゃないんですか?」
聞かれてたんだ。
本気じゃない言葉だったけど、やっぱり本気だったのかな。いや、本気だったらもう死んでる。
死にたくはないけど、生きたくもない?
あー、それがしっくりくるかも。
「わたし――――」
大丈夫だからって言おうとしたら、ふわりと煙草の匂いがして、雨に湿気たスーツのごわごわした感触が頬にあたった。
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