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「だから俺より仕事出来ればいいんじゃないですか?」 「はい?」 「俺がわざとミスして――――」 「やめて」  ずいぶんと低い声が出ることに自分自身驚く。  それよりも、柳瀬くんにそんなふうに見られていたことが悲しくて、悔しくて、痛すぎる。 「わたしを弱い者だって決めつけて、何も出来ないって思い込んで、手助けしなきゃ動けない奴だって……勝手に認定しないでよ!!」  今まで、どんなことを思いながら愚痴を聞いていたのかな。心の中ではずっと笑っていたのかな。駄目な奴だって自分が優位に立った気分でいたんだろうか。  ――――ふざけないでよ!!  わたしは可哀想な奴なんかじゃない。  怒りながら泣くなんていつぶりだろう。人前で泣くのも久しぶりで、その相手が柳瀬くんになるなんて思いもよらなかった。
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