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S
その青年━━彼のイニシャルからSと呼ぶことにする━━が、ASDすなわち自閉スペクトラム症と診断されたのは、彼が15歳の時だった(もっとも当時はASDという呼称はほとんど普及しておらず、診断名はアスペルガー症候群だった)。
Sはこの時にようやく自分がこれまで感じてきた生きづらさの原因が、自分の力ではどうしようもないことであることを悟り、諦めと同時に安堵の感情を持った。
それからSは、自分が普通ではないことの自覚を持ちながら周囲からは普通に見えるように振る舞い過ごした。しかし、Sが大学生の時、彼は鬱病になった。引き金となったのは、彼が始めたアルバイトだったが、原因はそれだけではなかった。彼がそれまでの人生で受けてきた様々なストレスにアルバイトで受けたストレスが加わり、ついに心がそれに耐えきれなくなったのだった。
Sの心はその日を境に壊れていった。
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