S

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なんとか最悪の状況を脱し、物事を考える余裕ができたSがまず最初に思ったことは、自分がこうなってしまったのは全てこの世の中のせいだということだった。彼は、全ては世の中が悪いのだと考え、世の中への憎しみを糧に、世の中に復讐するために生きていくことを決めたのだ。いや、そうすることでしか生きられなかったのかもしれない。 Sは普通のふりをすることをやめた。自分は何も悪くないのだ。自分が社会に受け入れられないのならば、それは世の中のせい。だったら、そんなものは壊してしまえばいい。壊して、自分の理想のかたちに作り変えればいいのだ。そう考えるようになっていた。 Sはこの世界を壊す方法について考えた。 この世界を壊すのなら、まず誰がこんなくだらない世の中にしたのかを突き止めなければならない。Sは、世の中の動向を探ったり、自分なりに考えたりした結果、この世界をこんなくだらない世の中にしたのは政治家たちであり、この世界を壊すには、政治の仕組みを破壊しなければいけないという結論に至った。 それから、Sは政治の仕組みを破壊するための方法を考え、試行錯誤を繰り返した。 まず、最初に思いついたのは、国会議事堂を襲撃し、政治中枢を麻痺させてしまうことだったが、武力行使に走ればその時点で警察が動く。そうなれば、間違いなく計画は失敗に終わる。この計画は断念するを得なかった。     
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