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室内に入ったからとて、内装が激変するわけでもなかった。
玄関から短く続く廊下も大理石敷きで、埃一つ落ちていない。
壁面に三つのドアが付いているが、左側の二つがトイレとバスルームで、右側がワイルドウイングの衣装部屋であることをレオは知っている。
向かうのは突き当りのドアだ。
まず現れるのはキッチンルーム。
そういえば屈強雑魚が料理の趣味があったとかで、グループの給湯室の扱いでありながらキッチンシステムと食器棚はそれなりに使用感がある。
キッチンを通過し、さらに奥のドアへ。
この奥はリビングだ。
このアジト最大の面積の部屋だが、パーテーションで細かく間仕切りされており、メンバー一人一人が固有のスペースを持っている。
窓際に置かれた複数台のパソコンを含む一際大きなスペースはハナタレの固有スペースだった。
新入りのレオとヒューガはそのスペースが用意されておらず、確かあの隅のベンチに追いやられてレオが激昂した記憶がある。
それもわずか一週間以内のことだが、遠い昔のように感じられる。
今はこの部屋に誰もいない。
静かだった。
……いいや、だが無音ではない。
レオが目をつけたのは、部屋の中央にそびえ立つ、鉄の螺旋階段。
ヒルズ・ダヴの屋根裏へ続く階段だ。
その階段は、そこに住まう小柄な主の身体に合わせてコンパクトに作られている。
大柄なレオは窮屈そうに、その階段を一段一段踏み締める。
少しずつ大きくなる、音。
半分ほど登った頃、その音が旋律であることをレオは悟った。
シンプルで陽気な旋律。
それはレオも好んで聴くロックンロールによく似ている。
あの女、こんな趣味もあったのか。
レオは階段を登り終えた。
大理石作りだった下の階とは異なり、電球色に照らされた暖かな木製の内装だ。
天井は狭く、屋根裏部屋のドアまで、レオは屈んで歩く。
そして気付く。
ドアの前に置かれた、DCの白いスニーカー。
郷に従わねばまた叱られることだろう。
レオは革靴を脱いでその白いスニーカーの横に並べた。
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