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緊張が走り、ゲータレードに口を付けるレオ。
もはや甘ったるさも感じない。
ただ液体状のものが口に入り、喉を通ったという感触だけ。
同じペットボトルを片手に持つJVの眼差しは、一点。
ただ真っ直ぐに、レオの瞳を見ていた。
「確かに貴様らを農場で歓迎した際、ど素人だったはずのヒューガがやたらと銃の扱いに慣れていることに違和感があった。貴様もそうだろう?」
「まっ、まぁ……言われてみれば」
「バカ者め。不審に思った我輩とハルクは、政府にハッキングを仕掛けたのである。ヒューガ・エストラーダという人物の情報を抜き出すためにな。だがしかしそこには、あの女の真っ当な素性しかなかったのである」
次にゲータレードに口を付けたのはJVだ。
空調の効きに気付いたらしく、目線が一瞬天井に移る。
そして目線はまたレオへ。
その一瞬、まるで結界が解かれたかのようにレオの緊張が緩んだが、またも逆戻りだ。
「その結果を目の当たりにして、我輩はヒューガを疑うのをやめたのだ。一度はな」
「なにかきっかけがあったのか?」
「ムルシエラゴをヒューガから預かった際に、アレクからとある報告があってだな。……話にも順番がある。この報告のことは後で話そう」
「分かった」
「うむ。この報告を機に、我輩はもう一度ヒューガを疑うこととなったのである。しかしどれだけ政府に探りを入れても真っ当なデータしか出てこなかった。そこで我輩は発想を転換したのだ。奴の正体はデータの先にあるのではないか、とな」
「データの先って……政府のデータを書き換えられるような組織なんてないだろ」
「それが発想の転換である。
ヒューガの正体は、政府の人間である」
「ッ!!!!!!」
驚愕した様子のレオを見て、JVは満足げに鼻を鳴らした。
想像通りのタイミングで想像通りのリアクションを見れたことが面白かったのだろう。
「そしてさらに付け加えると、今回の依頼主“変態”も政府の人間……我輩はミラノ県知事ロザリオ・バロテッリであると推測している」
「そんな……あまりに脈略が……」
「そう思うのも当然であるな。しかしそう考えると、このシナリオの多くに筋が通るのである。時間軸を追って説明しよう」
またもゲータレードを口に含むJV。
レオはその真似事さえも忘れるほどに、平静を失っていた。
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