桜の木と女の子と寂しがりやな少年

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 リンと言うらしい女の子の勢いに負けて、売っている桜の花びらを探しに行くことにした。  一軒目、スーパーで探して見るが見当たらない。 いつもは絶対寄らないお菓子作りコーナーで真剣に探していると、「お兄ちゃんこっち!見て!」と服の襟を引っ張られ、デザートコーナーに連れて行かれる。 「桜プリンだって!おいしそう。桜パフェもあるよ。ねぇ買って~」  いろんな種類のピンクの色鮮やかなスイーツが並んでいる。薄桃色のプリンだかムースだかの上に桜の花びらが乗っていて、確かにこれは可愛らしいし、おいしそうかもしれない。    だけど桜味って微妙だな。食べたことがないわけではないが、いまいちどんな味か表現しずらい味だと思う。色鮮やかで可愛らしいけど、香りだけのもので、はっきりこれが桜だという味はしなくて、ほんのり塩味くらいなんだから。 「買って買って」  しつこく言う女の子に根負けする。 「しょうがないなぁ。」 「やったぁ。どれにしようかなー。お兄ちゃん何個買っていい?」 「三個まで」  結局、透き通るような桃色できらきらした水まんじゅうと上に桜の花びらが乗っている桜プリンと桜パフェを買ってしまった。  二軒目、昔ながらの商店街を歩いて見ることにした。お総菜屋さん、揚げたてのコロッケを売る店など、おいしそうな匂いにおなかが鳴りそうになるのをこらえていると、「あった!」と女の子が声を上げた。  見ると、桜の塩漬けとラベルが張られおとなしくなった濃いピンク色の花びらが入っている小袋が売ってあった。  五十グラム五百円…バイトを辞めてからの予期せぬの出費は痛いが、女の子のキラキラした目線に負けて、買ってしまう。
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