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その智恵美から、コーヒーセットや缶詰めの詰め合わせ等と当たり障りのない時節の贈り物は頂いているが、この時期に送られてきたことは無い。
しかも宛先は、新田宏作になっている。彼女と話をした事など近年は無いし、彼女の顔をみたのも一昨年盆に来たときが最後だった。 たとえいとこ同士という関係でもその程度の付き合いの人間にこんな大きなのもおかしな話だ。
ともかくこんな大きなものを玄関の前に置かれていても邪魔になるだけだ。とりあえず動かそうと思い、腰をかがめて箱を持ち上げようとした。
重すぎる。 まるで箱いっぱいに鋼鉄でも入ってるかのように重く、これ以上腰を上げると腰から嫌な音が聞こえそうなので即座に辞めた。
「何だこれ? 智恵美ねぇは何考えてんだ」
思わず腰をさすりながら、そこにいない3歳年上の従姉妹に愚痴をこぼした。
ポケットに出ていたスマートフォン の時計にはもうすぐ正午にあと2分と表していた。持ち上げの無理ならをして玄関からずらすことにしたが175センチメートルの身長の宏作にとって、いやが応でも中腰になってしまい、ぎっくり腰をやらないように気をつけながらを箱を数十センチ押すのだった。
「宏作、何その荷物?」
母親の喜美子が頭に着けたペイズリー柄の黄色いバンダナを外して家に戻ってきた。
「智恵美ねぇが俺宛に送ってきたんだよ」
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