2. サクラの気配に誘われて

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店を出た私は、沈んだ気持ちを紛らそうと、 一人夜空を見上げた。 月の光のない夜、明かりの少ない裏通りでは 星が瞬くのが思いのほかよく見える。 ーーサクラは咲き誇るとこんな風に見えるのだろうか。 ますます存在感が大きくなる私の妄想のサクラ。 「サクラ……。見れないのかなぁ……。」 それはまるで、大切な人を失ったかのような喪失感だった。 失って初めてわかる、その大切さ。 いや、そもそも私は失ってすらいないのだけれども、 いつの間にか私にとってサクラは 旧来の友人のようになっていたのだ。 どうしようもないほどのセンチメンタルな気持ちは 私の目に悲しみを溜め、星空を歪めた。 その時、私の背後から声が聞こえてきた。 「見れますよ。」
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