1. 滅亡の象徴

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「親父さん、この柄はなに?初めて見たんだけど。」 ピンク色の切子のグラスに刻まれた模様を眺めながら、 私は居酒屋『花より団子より酒』の主人に問いかけた。 今までに見たことのない模様、しかし、それが花であることは間違いない。 その花は5枚の花びらを持ち、 先端に切り込みの入った花弁。 均整の取れたその佇まいは、まるできらめく星を模したかのよう。 いくつかの花がまとまって手毬のような形を成し、 咲き誇るその花手毬はグラスに無数に散りばめられていた。 「お客さん、いくつだい?」 包丁の手を止めた店主は 顔をあげてカウンター越しの私に聞く。 「32歳です。」 「32……そうか。 『サクラ』を知らない世代も、 もうこんなにでかくなっちまったんだな。」 店主は憂いを含んだ瞳をまな板に落とすと 再び包丁を走らせた。
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