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ーーサクラ?
店主の口から出た、聞き及んだことのないその単語は
突如として私を魅了した。
ーーサクラ。サクラ。サクラ。
頭の中で連呼しながら、切子のグラスを光にかざしてみる。
反射した照明は、サクラという花の木漏れ日のように私の顔を照らす。
ーーああ、なんと魅惑的な響きなのだろう。
この美しい形にその名をつけたのは誰だろうか。
私はその人に賛辞を贈りたい。
グラスの中の焼酎が揺らぐと、
切子のサクラはまるで風にそよいでいるかのようだ。
「サクラってのはさ、かつてこの国でもっとも愛でられ、
もっとも栄えていた花なのさ。」
店主は昔話をするような語り口で続けた。
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