1. 滅亡の象徴

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◇ 40年ほど前は、サクラはこの国で栄華を誇っていたらしい。 春が近づくと様々な品種のサクラが順に花を咲かせたのだそうだ。 まだ冷たい風が残る頃に、鮮明な桃色の美しい寒桜。 やや大ぶりな花ながらも、凛とした大島桜。 そして、もっとも華やかに咲き乱れる染井吉野。 多種多様なサクラが、それぞれの魅力で人々の目を楽しませる。 それに応えるかの如く、人々は花見という季節行事に興じたという。 しかし、そのサクラはある日突如として姿を消したというのだ。 原因は不明だが、一説によれば何かの病気の蔓延に依るものだと言われたそうだ。 それ以降、サクラは滅亡の象徴として扱われ 多くの人はその口から語ることもなくなったそうだ。
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