1. 滅亡の象徴

5/8
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
◇ 「つっても、俺もガキの頃に数えるほどしか花見に行ったことないけどな。」 店主は子供の頃の記憶を指折り数えながら言った。 「まあ、それでもあの頃に見た光景は今でもはっきり覚えている。綺麗だったなぁ。」 その顔は先程の憂いの表情とはうって変わり、 無邪気な子供のように嬉しそうだった。 「親父さんもサクラが好きなんですか?」 「あったりまえさ。 この店名だって、サクラに縁があるんだぜ? 『花より団子』の『花』はサクラを指しているのさ。」 「へぇー。じゃあ、親父さんもサクラに魅せられた一人なんですね。」 堅物そうな店主をここまで和ませるサクラとは、 一体どれほどまで美しいものだったのだろうか。 サクラに対する私の興味は益々深まるばかりだった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!