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◇
「つっても、俺もガキの頃に数えるほどしか花見に行ったことないけどな。」
店主は子供の頃の記憶を指折り数えながら言った。
「まあ、それでもあの頃に見た光景は今でもはっきり覚えている。綺麗だったなぁ。」
その顔は先程の憂いの表情とはうって変わり、
無邪気な子供のように嬉しそうだった。
「親父さんもサクラが好きなんですか?」
「あったりまえさ。
この店名だって、サクラに縁があるんだぜ?
『花より団子』の『花』はサクラを指しているのさ。」
「へぇー。じゃあ、親父さんもサクラに魅せられた一人なんですね。」
堅物そうな店主をここまで和ませるサクラとは、
一体どれほどまで美しいものだったのだろうか。
サクラに対する私の興味は益々深まるばかりだった。
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