第1章

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キノコや茄子なんかも入れるのが、母親譲りのやり方で、弟はこれが好きなのだ。でも、愛美はこうして弟にカレー を作ってあげられるのも、これからは、そう多くは無いだろうと思っていた。 「ただいま~」  思ったより早く弟が帰って来た。 「早いわね。ご飯まだ出来ないわよ」  後ろで聞こえたいつもの声に振り向きもせずに返事をする。 「判ってるよ。今日は顧問の先生がいないんで部活が出来なかったんだ。それに俺はもう一応引退してるしね。ところで、今日は夕食は何?」 「カレーよ。あんたの好きな」 「やったね! 出来るまで俺勉強してるわ」  それは、千秋にとって意外とも言える言葉だった。 『勉強って、あの子……』  口には出さずに言葉を飲み込んだ。  夕食の時間になり声をかけると、弟はすぐに降りて来た。 「父さん出張だから、今夜は二人だけよ」 「うん、判ってる」  短いやり取りで父親が今日は帰宅しない事を理解する。  カレーをよそい、黙って食べ始める。千秋は何だかいつもより弟の態度が違う感じなのに気がついた。 「どうしたの? なんかあったの」  千秋の言葉に弟はうなずきながら 「食べたら話をする」  そう言ってスプーンを口に入れ続けた。   食べ終わり、片付けると弟は愛美の正面に座り、意を決したように話出した。 「俺、姉ちゃんの高校に行こうと思うんだ」  千秋は弟が一瞬何を言っているのかが理解出来なかった。弟は部活の競技で中学の全国大会に出場した実績を持つ。その為あちこちの高校から入学の誘いがあったのだ。弟も誘いのあった東京の私立高校に進みたがっていたので、その高校に進学するものだと思っていた。 「あんた、東京の高校は?」  そこに進めば学校の寮に入り、その競技一色の生活になる。それも納得しての事だと思ったし、まさかそこを変えるとは思わなかった。 「今日、先生に断りの返事をした」  あっけなく言うその態度に千秋は少し腹が立った。 「あんた、あれだけあそこの高校に行きたがっていたじゃない。どうして……」  弟も千秋の言い方が強かったので、察したようだ。 「姉ちゃん、急に決めたことではないんだ。よく考えて決めたことなんだ」  弟の目は真っ直ぐ前を見つめていた。愛美もその目を見据えて 「ちゃんと、お姉ちゃんに話してご覧」 「判った」  そう言って弟は語り出した。
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