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「さ、さあ…………?」
『やーい、四月馬鹿め! って』
その言葉を聞いた楓は受話器を放り出して、慎みも忘れて廊下をドタバタ走り、自室の机の上に置いたままだった葵の手紙を改めて読んだ。
「明くる四月一日昼頃参上いたしたく……」
四月一日の部分だけ、やけに馬鹿でかく太字で書かれていた……!!
「や、やられましたわ! お、おのれ、氷室葵……! 三月三十一日に出した手紙で嘘をつくなんて、こんなの反則ですわ~!! 卑怯者~っ!!」
楓はベッドにひっくり返って倒れ、手足をジタバタさせて「きぃぃぃぃ!!」と喚きながら悔しがった。今年のエイプリルフールは、春光の嘘に警戒するあまり、他の人間に足元をすくわれてばかりだ。しかも、妹や学校の後輩など、格下の人間たちに……。
「くすくす……。くすくす……」
いつからそこにいたのか、春光が硝子戸に隠れて忍び笑いをしていた。
「わ、笑わないでくださーーーいっ!!」
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