柊子の助言

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「たまには、楓ちゃんのほうから風車さんに構ってあげましょうよ。もしかしたら、悪戯好きな風車さんなら、楓ちゃんにエイプリルフールの嘘をつかれて喜ぶかも知れないわ」 「わ、私はエイプリルフールの嘘なんてつけないわ……。だって、どの人もえげつな~い嘘をつくでしょ? 私はそういう人を驚かせるような嘘を考えるのは苦手だもの……」  楓が自信なさそうに呟くと、柊子は「えげつない嘘なんてつかなくていいじゃない」と言って笑った。 「これは柚兄様からの受け売りなのだけれど、西洋のエイプリルフールは、他人に迷惑をかけるような嘘をつく人はそんなに多くないそうよ。『君の美しい顔に花びらがついているよ』とか、騙したほうも騙されたほうもクスッと笑えるような可愛い嘘をついて、それでお終いなのですって。  きっと、日本人はエイプリルフールの習慣にまだ慣れていないから、嘘の手加減ができていないのよ。だから、楓ちゃんは風車さんにちょっとした可愛い嘘をついてあげたらいいと思うわ。心臓に悪い嘘で人を驚かせるより、そのほうがお互いに幸せになれるはずだし」 「可愛い……お互いが幸せになれる嘘……」  しばし考えこんだ楓はやがて何事か思いついたのか、「よ、よし……。今年は私が春光さんをドキリとさせてみせますわ!」と一人納得してコクコクと頷くのだった。
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