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「いやあ、さすが岡本先輩! あの被疑者から自白を取るなんて、どうやって嘘を見破ったんですか?」
署内の取り調べ室から課に戻ると入署3年目の若手刑事の田浦が嬉々として話しかけてきた。
「嘘をつく人間に嘘をつかせてはダメなんだ。本当のことを言わざるを得ない質問をぶつけたらいい。それと大切なのはもうひとつ」
「なんですか?」
「信頼関係を築くことだ」
私の名前は岡本護。48歳。
K警察署刑事課勤務の捜査官だ。
「大学の専攻は心理学でしたっけ?」
「まあな」
田浦の言う通り、心理学を学んでいたことはこの仕事にとても役立っている。
どんなに口の硬い被疑者でも自白を取れなかったことはない。
「岡本さんのところの息子さん、中学2年生でしたっけ?」
「そうだけど」
「反抗期とか大変そうですよね。でも岡本さんにかかればあの時期特有のおかしな気持ちとかも紐解いちゃうんでしょうね」
そう言われて、中学に上がってからあまり息子と会話していないことに気がついた。
「だといいんだけどな」
私はふっと笑うと書類を作成すべくデスクへついた。
息子は至って普通の中学生だ。
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