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「……そうか。何か困ったことがあったらすぐに父さんと母さんに言うんだぞ。今日、父さんはな……」
勿論、捜査内容に関しては守秘義務があるから全てを言うことは出来ないが、直は警察官に興味があるらしく、仕事内容を話してやると目を輝かせる子だった。
「ご馳走様。宿題やってくるよ」
「え、あ、ああ。頑張れよ」
反抗期。
とも少し違う気もするが、これが親離れというものなのだろうか。
リビングを出ていった直の背中を眺めていると、妻が湯呑みを持って直が座っていた席に腰を下ろした。
「大人になったでしょう」
「そうだな……。少し……いや、かなり寂しいものなんだな」
「子どもが子どもでいる時間なんて案外少ないのよね」
そう言われて直がまだ幼い頃を思い出した。
手を引かれ、親の行く方向に従っていた頃と今とでは違うのだ。
「そうかもしれない。直の進む道を俺たちは見守るしかないんだな」
「そうね。でもね、最近そういうこととは別で悩んでる事がありそうなのよ。私には絶対に言ってくれないけど、男同士なら話してくれるかもしれないわ」
「悩み? 学校で何かあったのか?」
「学校というか……少し前にあの子のスマホを見たんだけど、友達と上手くいってないような気がするの」
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