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第二章 感覚人間
何事もやってみて確認したい衝動に駆られていた。
ただ…当然自分のしてみたい事のみであったが…
「歳をとってから、色々理由を付けて、あれがこれがしたかったと呑んでくだ巻くなんて情けない!」
と考えていた。
松前伸二は後から言い訳する人生なんて御免だと決意して、興味あることに顔を突っ込み、飽きてはまた、他を探して見つけては顔を突っ込んでいた。
母親には特に迷惑をかけ、下の弟二人には呆れられていた。
「兄ちゃん、言うこともっともらしいけど、説得力無いよ!」と一番下の弟に言われた。
そう言えば、よく父方の祖母に
「あんたは、伸一(父親)にそっくりだ!」とよく言われていた。
でもそんなことより、伸二は自分の人生を賭けられる事を早く見つけたくて焦る様に次々と手を出した。
母親には
「三十歳に成ったらちゃんと仕事します!」と一応身勝手な誓いは立てていた。そして、その誓いは守った。
たまたま、バイト雑誌で見付け飛び込んだ仕事を十八年続けていた。
「尾原さん!何処に行くんですか?」伸二は仕事中にうろついている、久平を発見して咎めようと尋ねた。
「ええ、少し外が気になりまして!」ハッキリと言って退けた。
仕事場の外玄関にあり倉庫として使っている、大型ロッカー「通称 尾原ロッカー」の片付けに向かった様だった…
昼休みの休憩中、いつの間にか隣に座っていた久平は、新聞紙を開いて伸二に手渡した。
「何です?」伸二は新聞の情報が掴めず久平に尋ねた。
「この一節が良いんですよ!」
せめて線でも引いておいて欲しかった…
「松前さん、時間ありますか?」仕事終わりに慌てている様子で伸二を呼び止めた。
「どうしたんですか?」疲れていたので久平の慌ただしさには付き合わずに聞いた。
「これ見てください!」そう言うと久平はボロボロの小冊子を伸二に手渡した。
「ん?」まったく想像出来なかった伸二はその小冊子を持って久平に確認した。
「見てください!」久平の押しは強い…
「しまなみ海道ですか?」その小冊子はしまなみ海道のガイドブックだった。
「松前さんに見て貰おうと思いまして!」久平は満足そうに微笑んだ。
ガイドブックに写る景色はとても美しく…壮麗だった。
「へ~綺麗ですね!」伸二は心に感じた事は言わずに、何となく感想を言った。
「壮麗でしょう!」伸二の心に感じた感想を久平は代弁した。
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