第三章 二上山

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第三章 二上山

「あの山の右側に、ふたこぶある山があるでしょう?…あれが二上山です!」 止めた黒のロードバイクを左に寄せ、久平は伸二に説明した。伸二は最近購入した緑のロードバイクに股がり、久平の後で説明を聞いていた。 「じゃあ、もうそろそろ右側に曲がりますか?」伸二は久平に確認すると 「まだ、大丈夫です!もう少し先へ行きましょう!」久平はそう言うとロードバイクをスタートさせた。 久平は72歳とは思えぬ軽快さでロードバイクを走らせていた。 元々、腰が悪くて前の自転車も古くなり、新しい自転車の購入を考えていた伸二は久平と会話をしている中で、ロードバイクも良いかな?と思えてきていた。 たまたま、数年落ちの新車をネットで見つけ購入していたロードバイクとロードバイクウェアも次いでに久平の分も購入して、ちょうど誕生日だった事もあり、ウェアは久平にプレゼントした。 自分のウェアも後から久平とお揃いのデザインの物を買った。 初めロードバイクがこんなに乗りにくい自転車だとは思っていなくて、かなり苦労して毎日練習していた。 そして、ロードバイクを乗り初めてからしばらく経って慣れた頃、久平とサイクリングへ行くことになった。 二人で伸二の家で弁当を食べて、コースを確認してから出発した。 少し肌寒い季節になってはいたが、よく晴れたサイクリング日和であった。 「ペース配分はこのくらいで、大丈夫ですか?」久平は初心者の伸二を気遣い、ことあるごとに後を走る伸二を見ていた。 「もう、大丈夫ですよ!余り後ばかり見ないでください!」後を見る度にふらつく久平を心配して、久平の横に並び背中に手を置いた。 しばらく大きな河に沿って舗装してあるサイクリングロードを進むと、大型の橋が見えてきた。 「ここらへんで、左へ曲がりましょうか!」サイクリングロードを外れて橋の信号待ちで停車した久平は伸二の肩に手を置くと伸二に伝えた。 橋を越えると登りの舗装道路になり、山々をさらに近く見せた。 それから三十分ほど登り、三ツ又に別れる交差点に差し掛かると久平は手信号で左を差し曲がって行く 「そっちですか?」伸二は手信号に答える様に言った。 そして、久平は登り途中の信号で止まると、 「この先左手に道の駅があるんですよ!そこで休みましょう!」久平は少し疲れた顔で伸二に言った。 その信号から800メートルほど先に小さな道の駅に到着した。
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