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《一年A組、有藤 仁紀、職員室の担任まで》
ーーー校内放送だ。
入学早々、一体何の用だ。僕は何もしてないぞ。大体、目立つタイプじゃない。
……とすれば、クラス委員なんぞになってしまったが故の、早速の厄介ごとか。
家から程近い県立高校に合格したのは先月中旬のこと。大して高得点で合格したとも思えなかった僕が、何故クラス委員などというものになれたのか。それは、多分眼鏡だからだ(かどうか、本当のところは分からないが)。
そりゃ勉強と読書と少しのゲーム以外には何の趣味もない人間だし、クラスは同中の奴が一人もいないから全く楽しそうではないし(僕のこの学校における唯一の友人と呼べる人物はクラスが離れてしまったし)。
辛気臭い顔がガリ勉にでも見えたか、もしくは僕が面倒ごとを断れなさそうに見えたのか。
ともあれ、ボンヤリしている間に決まっていた役職にうんざりした入学式を思い出しながら、重い足を引きずって放課後の職員室を目指した。
「まあまあ、居たんだからいいじゃん。それよりお前、部活は美術部に入ったんだよな?」
「はい、それがどうか?」
「よし決定!」
美術部に入ったのは、もちろん幽霊部員になる為だ。放課後は今後恐らく塾に通う日が多くなるだろうから、入部はある種のカモフラージュだ。とはいえ内申書に色をつける程度だが……。
「ちょっとこれを見てくれ」
担任が小声で僕を手招きし、個人情報満載の学籍簿の一枚を指差した。一体何が“決定”なのか。
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