猫と私

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右前足に障害があったとしてもひとつの命だ。保健所に預けるというのはこの子の死を意味する。 せっかく生まれてきたのに。まだ生まれて数ヵ月しか経っていないのに。 障害をもつ動物を育てるのはとても大変だろう。 それがわかっているのにこの子を引き取ったのは、昔の自分と重なったからかもしれない。 私は児童養護施設で育った。いつからそこにいたのかは覚えていない。 なぜ捨てられたのだろう、とは思わなかった。なぜなら、他の子とは目に見えてわかる違いがあったから。 生まれつき右腕がなかったのだ。 学校では「児童養護施設にいる」「障害がある」という理由からいじめを受けていた。先生に相談しても、みんな子供なのよと言うだけだった。 誰も助けてくれない。味方なんていない。 私なんか生まれてこなければよかったのに。そう思ったことも幾度となくあった。
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