第1章桜が舞う頃

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あの日。そうあの桜が満開に咲いていたあの日。私は、桜の木の下で貴方を見つけた。 春の陽気に眠くなり、ふと上を向いた時桜の花の間から綺麗な白い手が伸びていた…。 一瞬ビクッとしたが、桜の間から覗いた綺麗な顔に見とれてしまっていた。 これが私と、あの方との出会い…。 私はこの春、自然が綺麗な"桜ヶ丘”にお手伝いさんと二人で引っ越してきた。元々病気を患っていた私のために、両親が進めてくれた街で、のどかで自然が多く私の病気を治すには、ぴったりだと。 それを聞き、すぐには納得はできなかったたのだけど、両親から「桜ヶ丘にはすごく綺麗な千年桜があるんだよ」という言葉に乗せられて、了承した。慣れ親しんだ街を離れるのは寂しいし、不安だったりもしたがこれも病気を治すためだと思い、楽しみにすることにした。実際これから住むことになる家に着いた時には、寂しさや不安は嘘のように無くなっていた。元々お父さんが持っていた屋敷で、白い外壁に西洋の雰囲気を感じる綺麗な家だ。 私の部屋は2階の角部屋で、大きなバルコニーと出窓がある広い部屋だ。その時点でテンションが上がっていた私だが、さらにテンションが上がったのはで窓から見える、大きな千年桜だ。私はお手伝いさん、美津(みつ)さんに「お体に障りますよ」と言われるまで、その千年桜を眺め続けていた。 引越しの準備も落ち着いた頃、私は千年桜の木下まで言ってみようかという気になった。私は美津さんに一言告げて、桜の木がある小高い丘に登った。この時はまだあんなに切なくて愛しい気持ちを知る事など、夢にも思っていなかったのだ…。
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