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車の窓から外を見ると、見慣れた田園風景が目に飛び込んできた。
実家に近づいていることを嫌がおうでも突きつけられ、私はどんどん胸が悪くなってくる。
ハンドルを握る彼はというと、緊張はしているかもしれないが、どこか嬉しそうに口元は綻んでいたりする。
「・・・・・何か、あなた余裕ある?」
「うん?まあ、俺、田舎ののんびりした感じ好きだから、風景見てるとちょっとは気がまぎれる。それに、彼女の両親への結婚報告って、これで2回目だしなぁ。1回目はさすがに緊張しすぎて気絶しそうだったけど、何とか乗り切ったし、今回はまだ心拍数はマシだよ」
言ってのける彼のこめかみから、嫌な汗がつたい落ちている。
やはり、不安なのだろう。私も不安だ。この結婚を両親に反対される予感で胸が苦しい。
さっき彼が言った通り、彼にとって、彼女の両親への結婚報告は2回目。つまり、彼は以前別の女性と結婚し、離婚してバツイチになったのだ。
私と出会ったのは、奥さんと離婚してからちょうど1年後、仕事の部署異動で私が彼と同じ部署に配属された時だ。共に仕事をするうちに、彼の自然な優しや器の大きさに惹かれ、食事に行くようになり、どんどん仲良くなって今に至る。
何でこんな人がバツイチなのかと思ったが、色々理由を話してくれるのを聞くと、男女の関係は一筋縄ではいかないものだと実感した。
別に彼が悪いわけでも、前の奥さんが悪いわけでもない。大体、離婚歴があったところで、私が彼と一緒にいたい気持ちは真実なのだ。
(そう、気持ちは真実なんだけど・・・・やっぱり、初婚の私にバツイチの彼は、親どう思うかな)
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