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確かに四方を山々に囲まれて、雄大な自然がいつでも目の前にあるというのはとてもとても心癒されるもので、それこそ観光でこの街を訪れるならば是非ともお勧めしたい。
梅宮市の西の方に行けば富士山と山の形状が瓜二つの埼玉富士ことタタラ山があり、ハイキングなんかをしてもらっても構わないし、山頂から梅宮の街並を見ても誰も咎めないだろうし、タタラ山の麓には八猿湖なんていう湖もありスワンボートに勝手に乗ってもらって湖畔の桜なんかを見てもらっても一向に構わない。
あとは史跡なんかも豊富にあって、梅宮城址付近を歩き回って歴史に想いを馳せたっていいんじゃないかなと思うし、湯川神社なんかにお参りして、願望を好きなだけ神様に聞いてもらえば良いと思うし、そもそも豊かな自然は求めてないって人は、市街地に行って好きなだけチェーン店で酒を飲めば良いんじゃないかなとも思う。
つまり、訪れるだけなら別段そこらに転がっている普通の観光地と何も変わらないはずなのだ。
それにも関わらず観光でこの街を訪れる人間なんてほとんどいやしないのが現状である。
何故か?それはここに住んでみればよくわかる。
見る景色の何もかもが反転して目の前に迫ってくる。
豊かな自然は外へ出るものと内に入るものを阻む巨大な壁となり、その雄々しい山々は険しい眼で僕らを見張り続け、精神は次第と鬱屈となる。
かつて広大な沼地であったことからか、街の空気はやたらと湿り気を帯び、そこで生活する人間達を湿気させる。
鬱屈として湿気った人間のすることは大体決まっていて、そこから出ようとする人間の足を引っ張るということと外から梅宮に入ってこようとする人間達を排他するということの二つで、自然と人、その両者がこの地を周囲から孤立させていく。
ああ、哀れなり梅宮と梅宮の子ら。
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