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「まあ別にそれでいいじゃない、消えてなくなる訳じゃあるまいし。」
…なんて、いつかの春の日、爽やかな風の中、何処かのラベンダー畑の中で、誰かに言われたような気もするけれど、良いわけはない。
このままでは梅宮は近い将来消えてなくなる。
「なにを大げさな!」
…いいや、消えてなくなるのだ。
ほんとうに、消えてなくなってしまうのだ。
誰かに、自分以外の誰かにその存在を知ってもらわなければ人が消えてなくなるように、街もその街に住む人間以外の誰かに知ってもらわなければ消えてなくなってしまうのだ。
そして僕は消えてなくなってしまうのが嫌なのだ。
どうしようもなく嫌なのだ。
ならば、今こそ梅宮の街を人々に知ってもらうしかない。
他でもない、僕自身の手で故郷梅宮の街を守るしかない。
そんな衝動に駆られ僕はとにかく身の回りの出来事を記録することにした。
梅宮の街のこと、僕自身のこと、僕の家族のこと、僕の級友たちのこと、名も知らぬ梅宮の人々についてのこと、出来うる限り取りこぼすことなく記録した。
それを今から皆様に読んでいただきたい。
読んでもらったとて、梅宮という街に大勢の人々が押し寄せるなんてことには決してならないし、そんなことは望んでもいない。
梅宮という街を知ってもらえるだけでいいのだ。
それだけのことで、梅宮という街の周りに知らず知らずの内に出来た薄い膜に小さな風穴を開けることになるのだから。
そして僕はその穴から向こう側を覗いてみたいのだ!
そこには本当の意味での外の世界が広がっているような気がする。
やっと「ハロー」と心から言える。
どうか皆様もその小さな穴から梅宮を覗き込んで頂きたい。
覗き込んで、小さな声で囁いてほしい。
「ハロー梅宮」なんて…。
返事がかえってくるかどうかはわからないが…
そんな願いを込めて。
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