ああ狂おしき、梅宮の日常

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’’トクナリは向こう側’’ 春は麗らかで、暖かい。 暖かいから麗らかか?わからないけれど気分が良い。 気分が良いときはよく目を瞑る。 目を瞑っても世界は程よい距離感で僕を包み込むから安心だ。 距離感、これは非常に大事だ。 世間ではこの”距離感”という言葉、「人間関係の程よい距離感」なんて言う風に良く使われる。 その際の人間関係とはあの人間関係のことだ。 つまり友人関係、男女関係、親子関係などなどを指すのだろうけれど、そんな距離感については僕は知ったこっちゃなかった。 人間関係の程よい距離感について熱く語る人間が嫌いだった。 そんな人間とはそれこそ良い距離感を取れそうにない、つまり距離を置きたい、遠く遠くどこまでも遠くから侮蔑の目でそいつが人間関係の距離感をテーマに話しているところを見てやりたい。 遠くから小さな声でやめちまえと言いたい。 …そんな話がしたい訳ではなく、つまり世界の膜と僕の距離感の話をしたいのだ。 いや、特に話すことはない。 とにかく距離感が良い。 世界と僕との。 そんな日は気分が良い。 距離感が良いから気分が良い。 そうだ、そっちだ。 距離感が良いから気分が良いから目を瞑れる。 そうこれだ。
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