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「わわっ目を瞑っちゃっている、ねえ起きて起きて、起きて私と草相撲しようよ。」
君の声が聞こえる、起きてと僕に言っているけれど僕は薄く笑って目を瞑り続ける。
今僕は眠っているので草相撲は出来ません、と君に言う。
「ええー!なんだよそれ、じゃあさじゃあさじゃあさ、いま喋っているのは誰なのよー?」
君はクスクスと笑いながら僕に詰め寄る。
「このお口は誰のお口なの?貴方のお口でしょ!ねえ貴方のお口でしょ!今このお口が喋ったの見たよ!」
このお口が喋っているのは確かですが、喋っているのはこの男ではありません。
「え!?そういうことだったの!…じゃあ貴方は誰なの?」
僕は”マジカルパニーニトクナリ”です。
この男の身体を借りています。
「わわっ!そうだったのね、でもねトクナリ、だめだよその身体は藤村君のだから。返してあげて。お願い。」
ダメです、トクナリは内側からこの男の身体を破壊し尽くします。
「わわわわ!ダメだよトクナリ!出てって!お願いだから!藤村君を壊さないで!」
君が僕のお腹辺りを揺する。
お腹にトクナリがいると思っているのだろう。
「ねえ出てって!トクナリ出てけ!トクナリ出てけ!」
やめなさい無駄な抵抗をするのは、それに何故お前がこの男の身体を案ずるのだ?この男の身体はお前のじゃない。
お前にはお前の身体があるだろう。
なんか僕の芝居も調子づいてきた。
「そっ、それは…それは私が藤村君を大事に思っているからだよ!大事な藤村君の身体は私にとっても大事なの!壊れると悲しいんだよ!…トクナリにはわからないの?」
ふふふ理解出来ないなその考えは。それが人間か。愚かだな。このトクナリには関係ない話だ。
僕はそっとtシャツの中、腹部の位置に左手を潜り込ませる。
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