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「ねえ関係なくないよ!ねえトクナリ、やめて、お願いだから!」
と未だ僕のお腹目掛けて一生懸命に話しかけている。
君が再びお腹に手を伸ばすのを見計らい、今だ!とtシャツのお腹の辺りに忍ばせた手を思いっきり天に向かって突き上げる!
エイリアンがぁああ!のアレの要領で。
「…えっ、いや、…いやぁあああああああああああ!トクナリやめてぇええええええ!お願いだから破っちゃだめぇええええええ!戻ってお願いだから戻ってぇええええ!」
君が予想以上に絶叫した。
やりすぎたかと思い、手を一端引っ込めるものの、あと一回位と思い、もう一度出してぇえええ!と叫びながら突き上げた!
「わぁあああああああぁあああああ!やめてってばトクナリやめてぇええええええええええ!藤村君を返してぇええええええええええ!」
君はポコポコポコと僕のお腹を叩く。
トクナリへの攻撃なのだろう。
それでもいまだ突き破らんと雄々しくtシャツの中で躍動し続けるトクナリ(僕の左手)を見て、君は絶望一色にその瞳を染め上げて、その絶望が一雫の水となって君の頬を流れ、僕のTシャツにポツリと落ちた。
からかうにも程がある。
これは確実にやりすぎだ。
僕が最も嫌うもの、それは純粋無垢なる君の心を弄ぶもの。
気づけば僕がそれになっていた。
心から反省した、ごめんなさいと謝ろうと思った。
だから目を薄く開けた。
しかし、僕の目に写ったのは、先ほどまでの死んだ秋刀魚の目だった君の瞳があれよあれよと光彩を取り戻し、みるみるうちに力強さが漲っていく様。
ふうふうふうふうと息荒く何を思ったのか立ち上がり、こうなれば私がなんとかしなくっちゃとごしごしと涙を拭った。
トクナリ!私は貴方から藤村君を取り返すからね!
ふうふうふうふうふうっと先ほどよりも更に君の息が荒くなり、両の手のひらを僕のお腹目掛けてかざし、
「本当は使っちゃダメだって言われているけれど、今だけは仕方ない!背に腹は代えられないもんね!!」
食らえトクナリ…君は小さくそう呟くとすっと目を瞑り、一瞬のうちに目をカッと見開き、すっと又目を瞑った。
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