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起
気配を感じた。
「おはよう、真」
緑の瞳にぶつかった。手を伸ばせば触れる距離に果穂の顔がある。冷たい汗が背中を流れる。人肉食の鬼が、眠っている俺を観察していた。
「おはよう、で、なに?チューして起こす気だったのか?」
「早く起きるよう念を送っていた。チュー?した方が早く起きるのか?」
「静かに寝かせてくれよ」
朝食の品定めをしていたわけじゃないなら、何でもいい。
時計は9時半を指していた。寝坊だ。ホテルの朝食は終わっている。頭が痛く、胃が重い。昨日の酒がまだ抜けきっていない。
「水持ってきて」
果穂に渡された水を飲みながら、スマホをチェックした。姉からの連絡はない。仕事で邪魔される心配はない。
「喜べ、果穂。今日こそ海に行くぞ」
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