幸せというもの

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 あっという間の二週間でした。  お悔やみの言葉をくれた皆さま、ありがとうございます。 おかげさまで、無事に義父を見送ることができました。  十年近く、義父と義母を面倒見てきた。 だって、一年に一回は二人とも入院するんだもん。 三年前に二人いっぺんに入院した時は、あたしゃ死ぬかと思いましたよ。  義父が誤嚥性肺炎で入院していたある日、お義母さんから夜中の十二時ごろ電話があった。 「今から救急車で運ばれるから、よろしくお願いします。 足の痙攣が止まらなくなっちゃって…」  なぬ? で、わけもわからぬまま、主人と急いで病院に行った。 と、割合元気そうなお母さんがいた。 「なんか点滴してもらったら元気になっちゃって…」 と、診察台で横になりながら。  医者に、たいしたことはないと思うが、念のため検査があるので待っていてくれと言われ、待合室の椅子に座った。  と、救急隊員の人が申し訳なさそうに近づいてきた。 「あのぉー、お母さん自分で運転して消防署に来ちゃって。 申し訳ないのですが、車をご自宅に移動してもらえませんか?」  え??? 「お義母さん、自分で運転していったの?てか、運転できたの?」 「這いつくばって車に乗って、足が少し動いたから運転しちゃった」 「え?だって救急車… 呼ばなかったの?」 「だって、家まで来てもらうの悪いかな、と思って… 消防署についた途端動けなくなっちゃって」  …。 あの時ばかりは、言葉が出なかった。  ええ、その後主人と消防署まで行って、お義母さんの車を実家に戻しましたよ。 四時間くらい前に、ワイン一杯飲んじゃったんですけどね。 酔いなんか吹っ飛んでたし。  検査入院という事で、二週間入院になったわけだが。 仕事の合間に、お義父さんとお義母さんの病院に通い、必要なものも買い、洗濯をして…  仕事中に、何度も病院から電話が入っていて、慌ててかけた。 「お義母さんが、いなくなっちゃったんです! どこを探してもいなくて」  仕事を早退して、病院に行った。 と、看護婦さんに怒られて、しょんぼりしているお義母さんがいた。 「お義母さん、どこ行ってたの?」 「欲しいものあったし、お父さんも心配で…」 なんと、タクシーで実家まで戻り、車を運転して買い物をして、お義父さんの病院に行って、帰ってきたのだと。
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