幸せというもの

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 外出許可が待ちきれなくて、脱走したのである。 「お母さんの車、どっかに移動して、鍵も持っててもらえますか? でないと、このまま入院は厳しいです」  怒りを必死にこらえている様子である。 そりゃそうだよなぁ。 忙しいだろうに、近所や実家まで行って(車で20分)探してくれたんだもん。 「申し訳ありません。 二度とこのようなことは…本人にもきつく言い聞かせますので」 と、頭を下げた。  つーか、お義母さんの天然っぷりには慣れてたから、謝るのもお茶の子さいさいである。    探してくれた若い看護婦さんは優しそう… というか、笑いをかみ殺してるようだったので 「あーなんかすいません」 頭ポリポリ…な感じで言ったら 「いや… わたしも勤め始めて初めての体験で… なんか、大変そうですががんばってくださいそうね。 お義母さまのことは、よく診るように致しますので…」 と、逆に励まされた。  つーわけで、 わたしは大概の天然、不思議ちゃんにも対処できる。  お義母さん以上の天然には、まだ会ったことないから。  お義兄さんは、バツイチで、都内でエンジニアの仕事をしていた。 わたしの父が認知症になり、さすがに三人の面倒を見るのはきつくなったので、帰ってきてもらった。 …ちょうどリストラされて遊んでたんだもん。 つーか、もっと早く帰ってこれたろ!丸投げにしやがって! とは、多少思っていた。 帰ってきただけで、入院、老人ホームを行ったり来たりのお義父さんのところも行かない。  まあ、想定内だったし、医療費などだけは出してくれてたのでよしとする。  その義兄さんは、葬儀が終ると、お義父さんの位牌と骨壺だけ持って、お義母さんを斎場に置いてさっさと帰ってしまった。  ぎゃふん。 久しぶりに使った。  まあ、わたしと主人がお義母さんを送ればいいだけの話し。  わたしは、大抵の天然にも対処できる方法を身につけた。
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