特別な人

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特別な人

 子供のころから、漠然と「特別な人になりたい」と思っていた。 何が特別かもわからずに。  「歌手になりたい」とか「女優さんになりたい」とか。 ただただ漠然と思っていただけで、特に何かアクションを起こすわけでもなかったので、現在に至る。  今思うと、お金持ちに憧れていただけである。 なんとなくそういう職業につけば、お姫様のような暮らしができるのではないかと。  黒の上下のスーツを着た執事に「お嬢様」とか呼ばれてみたかっただけなのかもしれない。  ただただアホでした。  小学生のころから、小説が好きで「小説家になりたい」などとも思っていた。 思っていただけで、作文くらいしか書いてなかったのだ。 なれるわけがない。  今は、拙いながらもお話しをいくつか書き上げられた。 それだけでも、十分な進歩だ。  特別な人になりたいなんて夢みていて、我ながらアホだった。 生まれてきて、今生きていられるという事だけで、十分に特別な人だ。 誰しも。
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