ポチッの誘惑

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ポチッの誘惑

初めての完走証をいただいたのが平成25年だったから、5年前の事だ。 「愛七、マラソン大会出てみない?」 と、友人から誘われたのがきっかけだった。 「マラソン???嫌よ。しんどいもん。」 毎日の晩酌だけが楽しみだった私は即答した。 「いや、マラソンってもたった10kmだよ。  街で飲んで5kmぐらい歩いて帰ってきてるじゃない。  その体力があったら大丈夫。楽勝よ」 と、酒の席で誘ってくる。 だんだんいい気分になって来た私は、その悪友の話に乗ってしまい あろうことか二次会のカラオケで 爆風スランプの「RUNNER」を熱唱していたのだった。 何のことはない、悪友は自分がひとりで参加するのが嫌で誘っただけだった。 で、たった1回だけだからとランナー用のシューズも買わず ウォーキングシューズでちょこちょこ練習し、当日を迎えた。 練習した距離は、1回3~6km。約2ヶ月ほどだったろうか。 もちろん、毎日ではない。 さて、マラソン大会当日。 走り始めて気づいた。ここは山間部。 先頭あたりは、とんでもない上空にいた(のように見えた)。 標高410mから出発し、480mまで上り また430mまで駆け下りちょびっと平坦を走り、折り返して また480mまで上り、410mまで駆け下りるというハードなコースだったのだ。 取り扱い説明書を読まない私は、送られてきていたコース図を見ていなかった。 いや、見てはいたのだが、「読んで」いなかったのだ。 (騙されたー!!!) と思いつつ、ぜいぜいぜいぜい、やっと制限時間内でゴール。 ゴールしたとたん、足がツッタ。 すぐに救護テントに向かいマッサージしてもらう。 励ましてくれるのだが、痛いものは痛い。 フルマラソンを走ってきた悪友に毒づくと、「このコースが走れたらフル走れるよ」 と、打ち上げの席で褒められてその気になってしまった。 そして、私のマラソンライフが始まってしまった。 酒が入ると、ろくなことがない。 エントリーすると、翌年はお誘いの手紙が届く(1回だけね)。 10kmが1番しんどい事に気づき、翌年からはハーフを走っているが 毎年毎年、標高の高さに後悔しつつも、お手紙が届いたら ついついネットの「エントリー」をポチッとしてしまう私がいるのだ。 平成30年12月14日(金)
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