後悔しない方法

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後悔しない方法

先日、施設にいる祖母を見舞った。 母、母の妹、私の3人で、だ。 雪が降ると面会に行けないので、春まで会えないかもしれない。 最近、そういう理由で親類が祖母を見舞う事が多い。 皆 「雪が降る前に。もし雪が積もったら春に会おうね」 と言葉にするのだが、最近訪問者が多かったためか 「来てくれるのは嬉しいけれど、帰ったらしばらくは淋しい」 と初めて口にした。 運転手の私も、 「施設の中から見送るね」 と言っていた祖母が、やはり寒空の中玄関まで出てきたのであわてて バイバイ、と手を振り車を発車させた。 助手席の母が 「淋しいと言ったのは初めてだ。虫の知らせかも」 とグスッと泣く。 後部座席に座っていた母の妹ー私の叔母が黙る。 私が 「最近、訪問客数が多かったからよけいにそう思うんだよ」 と言うと、 自分を無理やり納得させたような母が 「そうだね」 とつぶやく。 命の長さは、誰にも決められない。 最近自殺してしまった友人の息子さんも、リストカットを繰り返していた。 本当に亡くなったと聞いたとき、私には 「彼は本当に逝きたかったのか?いつもの自傷行為の延長が不幸を生んだのでは?」 との思いがよぎった。 仕事に就くための試験に挑み、そして亡くなった日に合格通知が届いたと言う。 そんな前向きな行動をしている人間が、果たして本当に この世から消えたいと切望するだろうか? ーーーーーーーーーーーー 104歳で亡くなった方がいた。 周りの親戚もご近所も「大往生だ」とお祭りのような葬儀だった。 地元の新聞紙も大きく取り上げた。「ほとけのような○○さん逝く」と。 亡くなった方の息子さんがぽつりと言った。 「いくつで亡くなっても親の死というのは悲しいんだ。」 その言葉がもうずーっと、私の中でどんどん蓄積している。 祖母は96歳。 耳が遠いけれど、時々ぽけぽけ言うけれど可愛いし愛おしい。 こんな祖母が、この世からいなくなるのを想像するだけで悲しい。淋しい。 いつもケンカして憎たらしい母も、この世からいなくなるときが来ると思うと辛い。 4年前に父が逝ってしまってから、「死」というものの恐怖が大きくなった。 大事なひとに優しい言葉をかける、笑顔を見せる。 それが、最低限後悔しない秘訣かもしれない。 平成30年12月22日(土)
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