6人が本棚に入れています
本棚に追加
後悔しない方法
先日、施設にいる祖母を見舞った。
母、母の妹、私の3人で、だ。
雪が降ると面会に行けないので、春まで会えないかもしれない。
最近、そういう理由で親類が祖母を見舞う事が多い。
皆
「雪が降る前に。もし雪が積もったら春に会おうね」
と言葉にするのだが、最近訪問者が多かったためか
「来てくれるのは嬉しいけれど、帰ったらしばらくは淋しい」
と初めて口にした。
運転手の私も、
「施設の中から見送るね」
と言っていた祖母が、やはり寒空の中玄関まで出てきたのであわてて
バイバイ、と手を振り車を発車させた。
助手席の母が
「淋しいと言ったのは初めてだ。虫の知らせかも」
とグスッと泣く。
後部座席に座っていた母の妹ー私の叔母が黙る。
私が
「最近、訪問客数が多かったからよけいにそう思うんだよ」
と言うと、
自分を無理やり納得させたような母が
「そうだね」
とつぶやく。
命の長さは、誰にも決められない。
最近自殺してしまった友人の息子さんも、リストカットを繰り返していた。
本当に亡くなったと聞いたとき、私には
「彼は本当に逝きたかったのか?いつもの自傷行為の延長が不幸を生んだのでは?」
との思いがよぎった。
仕事に就くための試験に挑み、そして亡くなった日に合格通知が届いたと言う。
そんな前向きな行動をしている人間が、果たして本当に
この世から消えたいと切望するだろうか?
ーーーーーーーーーーーー
104歳で亡くなった方がいた。
周りの親戚もご近所も「大往生だ」とお祭りのような葬儀だった。
地元の新聞紙も大きく取り上げた。「ほとけのような○○さん逝く」と。
亡くなった方の息子さんがぽつりと言った。
「いくつで亡くなっても親の死というのは悲しいんだ。」
その言葉がもうずーっと、私の中でどんどん蓄積している。
祖母は96歳。
耳が遠いけれど、時々ぽけぽけ言うけれど可愛いし愛おしい。
こんな祖母が、この世からいなくなるのを想像するだけで悲しい。淋しい。
いつもケンカして憎たらしい母も、この世からいなくなるときが来ると思うと辛い。
4年前に父が逝ってしまってから、「死」というものの恐怖が大きくなった。
大事なひとに優しい言葉をかける、笑顔を見せる。
それが、最低限後悔しない秘訣かもしれない。
平成30年12月22日(土)
最初のコメントを投稿しよう!