ごくありふれた日常

2/12
前へ
/187ページ
次へ
【神楽 ソラ】 「あ~」 「キャー」 荒廃した廃墟の中で、汚い服装に身を包んだ頭の寂しい男が、逃げ惑うスリムな女性の肩に噛みついた。 「誰かぁ、キャー」 助けを求める声も虚しく、女性はその場に倒され、襲った男はムシャムシャと音を出して、肉を頬張るように女性の人肉を喰らっていく。 「貴方はこの世界を生き抜く事ができるかぁ?ゾンビJAPAN!9月30日上映開始」 ここは、北海道の歓楽街、すすきの にできたショッピングモールにある映画館の入口。 最新のゾンビ映画の宣伝を大きなスクリーン画面で放映している。 ゾンビ映画といえば、毎度 似たようなお決まりの展開。 ゾンビに噛まれたら、その人は感染する。 生き残りをかけたサバイバル。 生きようとする者。 死のうとする者。 自殺する者。 裏切る者。 絶対に関わりたくないドロドロとした人間関係。 俺はそんな映画の宣伝を疲れた溜め息をして、黙って見つめていた。 「こんなこと起きるわけねぇじゃん」 呟いた後に、俺はその場を後にしてバイト先に向かう。
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加