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3章 ?の場合
(夢か・・・)
また、夢を見た。今のは、この街で桜が大量発生していることを知らない、男の夢だった。その前は飛び降りた女の子の夢だった。
夢を見るのも、この街を桜で埋め尽くした代償。
そう、桜ノ街を創りあげたのは私だ。
子供の頃、散りゆく桜を見て、「ずっと咲いてくれたらいいのに」「世界が桜でいっぱいになってくれたら、綺麗だな」そんなことを考えていた。
そんな嘘みたいな願いが、叶ってしまう。
エイプリルフールには。
そして4月1日。エイプリルフール。嘘みたいに、枯れない桜が街を覆った。
リピートリピート。同じ日の繰り返し。でも願った私の時間は進む。気付けば14歳。街のみんなの1日を夢として消化し、だいたい1週間程度の記憶に留まらせることを繰り返した末路。
また、眠くなってきた。目を閉じる直前に桜を見上げる。視界が柔らかなピンクに染まった。
どうしてこんな簡単なことに気付けなかったのだろう。ここにいるだけで、桜でいっぱいの世界じゃないか。別に街全体を桜で一杯にしなくても、自分の周りが桜でいっぱいなだけで。
「あっはは!」
眠気に逆って目を開ける。そして叫ぶ。
「桜の木の下、最高!」
私にとっての世界がそれなら、それなりに生きればいい。
この桜の木の下で眠り続けるのも、案外悪くないかもしれない。
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