プロローグ

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プロローグ

 ここは磯山病院、中田哲也(なかたてつや)は相変わらず警備員をしている。  警備員と言っても本物ではない、哲也は妄想型の統合失調症を患った妄想癖の患者なのだ。自分が警備員だと妄想しているらしい、他者に害のあるものではないので先生や看護師たちも妄想に付き合ってくれている様子だ。担当の池田先生曰く治療の一環という事らしい。  哲也は妄想型の統合失調症を患った妄想癖の患者だが病状は軽く本来なら入院する必要は無いのかも知れない、哲也自身も何故入院しているのか分からない、親族に入院させられたのか? 犯罪でも起こして強制的に入れられたのか? 何も覚えていない、記憶が欠如していた。それも病気のせいなのかも知れない。  磯山病院は怪我や病気など目に見えるものを扱う一般の病院とは違い、目に見えない心というものを扱う心療内科の病院である。故に近隣住民たちとのトラブルを避けるために町から少し離れた山の中に建つ、専門だけあって病院の規模は大きなもので大学病院規模の本館に別館があり入院患者の病棟も普通のものが10つに重症患者用の隔離病棟が3つもある。専門の医者にカウンセラーがいるのはもちろん、施設も整っていてトップレベルだ。これだけの規模であるから全国から患者が集まってくる。  患者には本当にいろいろな人がいる。よく聞く総合失調症や気分障害を患っている人はもちろん、脳器質性障害などと難しい病名を医者からよく聞く、患者から話を聞く機会もあるが病んだ人からよく聞く誰かに監視されている話や電波を送ってくるなどという話とは違う話をする人がいる。先の人たちの大半が何度も聞くと辻褄が合わない事だらけなのに対して何度聞いても話の辻褄が合いまるで事実であるかのように突拍子もない話をする人たちがいる。  哲也は思う、この人たちは本当に心の病気なのだろうか、もしかして......。  病院という隔離された空間の中、哲也は警備員をしながら色々話しを聞いて回る。  どこかに自分の出口があるような気がするからである。
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