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一方野生動物は厳しく制限されている。野生動物はノミやダニやその他の寄生虫の宝庫だ。体の弱った患者が感染症にかかる恐れがあるため敷地内に入らないように厳重に管理されていた。とは言っても空を飛ぶ鳥や鼠などの小さな動物は防ぎようがない、狸や狐に鼬なども見る事もある。患者が触らないように注意したり建物に侵入しないように管理しているのだ。
そういう事も有り野良犬や野良猫が敷地に入って来たとなると大騒ぎになる。もちろん警備員である哲也も侵入者の排除に走り回るのは言うまでもない。
深夜の見回りを終えた哲也がベッドに横になる。
今日は騒ぎもなく楽だったな......、1日を振り返りながら眠りに落ちていった。
「ここは? 」
木々の間を哲也は歩いていた。下っている所を見ると山道だろうか?
「ここはどこだ? 」
立ち止まると辺りを見回す。
後ろを見ると山肌に沿ってコンクリで出来た大きな壁が見えた。
「あれは...... 」
壁に見覚えがあった。思い出そうと記憶を辿ろうとした時、声が掛かった。
『外だよ、私が居る外の世界だ。でも本物じゃない、こうして見せるだけで精一杯だ』
哲也が前に向き直る。
「えっ? 山下さん...... 」
小柄で少し腹の出た中年男が立っていた。自分の事を狸だと言っていた山下勝也(やましたかつや)さんだ。哲也には一目で分かった。怖い記憶ではなく楽しかった思い出なので忘れるわけがない。
「山下さん、御久し振りです。元気そうで安心しましたよ」
懐かしさに哲也の顔が綻んでいく、
『挨拶している場合じゃない、逃げるんだ哲也くん』
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