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診療内科系の病院に入ってくる患者は親族や友人などの勧めで入ってくるのが一般的だが加山さんは自分の意思で診察に訪れた。
何でも化け物に命を狙われているらしい、警察に守って貰おうとしたが当然の如く断られ診療内科系の病院に行ってみてはどうかと言われて磯山病院を紹介されたのだ。
普通は心療内科を受けろなどと言われたら落ち込むか怒り出す人が殆どだろうが加山さんは素直に応じた。正に藁にも縋る気持ちだったのだろう。
磯山病院には休職して入ってきた。化け物の幻覚を見る事以外は何も異常は無く仕事もこなしていたので職場仲間も入院した事については驚いていた程である。
どんな化け物が命を狙っているのかは勿論だが自身から入院を希望したという加山さんに興味を持った哲也は早速話しを聞きに行った。
「206号室、ここだ」
加山という名札を確認して個室の開いているドアをノックして中を覗き込む、
「すみません、少しいいですか? 」
愛想笑いをしながら哲也が訊くとベッドに横になって雑誌を読んでいた加山が上半身を起こす。
「何だあんたか......何か用か? 」
「すみません、僕はここの警備員をしている中田哲也といいます」
「警備員? まぁいいか、それで何の用だ」
訝しい顔で見つめる加山のベッド脇まで哲也が入っていく、
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