第一話 入れ物

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第一話 入れ物

 誰にでもお気に入りの入れ物があるだろう、小物入れだったり大きなトランクだったり、高価なものでなく段ボール製の箱も使い勝手が良かったり長い間使っていれば愛着が出て大切になるものだ。  哲也にもお気に入りの入れ物がある。何の変哲もない市販されているクッキーの空き缶である。丸い缶には飴玉やチョコなどお菓子を入れている。味気ない病院食と違いお菓子は好きなものを買って自由に食べる事が出来る。病院という閉鎖された空間での楽しみの一つと言ってもいい。  大事なお菓子を入れている空き缶だ。使っているうちに愛着が出て少し錆が出ても新しくしないでそのまま使う程に気に入っている。いつの間にか中身と同じくらいに大切になっていた。  では入れ物とは何なのだろう? 大事なものに傷や汚れが付かないようにカバーする。贈呈品の見栄えを良くする。他者に取られないように隠す。色々考えられるが入れ物にしまうという感覚は人間特有のものだろう。  入れ物が好きな動物も居るがそれは住処として使ったり餌を蓄えるのに使うだけだ。     
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