52人が本棚に入れています
本棚に追加
圭人は棚から取り出した・・多分・・10冊以上はあろうかと思われるスケッチブックを腕に抱えて・・さっきの場所に座った。
「・・千雪・・見て」
圭人は私に一冊のスケッチブックを差し出した。
なんで今、こんな物を?・・正直・・そう思いながらも・・・私は圭人に差し出されたスケッチブックを開いた。
――え?これって・・・全部・・私・・?
小学生の頃から中学と・・色んな私が描かれてた。
一つ一つの絵がとても丁寧で綺麗に色を塗ってあるものもあった。
・・描き手の・・圭人の・・思いが伝わってくるような・・優しくて・・温かい――!嘘・・まさか――
「それ・・俺の宝ものだよ」
私はスケッチブックから弾けるように顔を上げて圭人を見た。
「物心付いた頃から俺の隣にはいつも千雪がいた。・・千雪は可愛くて・・強くて・・クスッ・・俺を守ってくれた。・・俺、千雪を描きたくて絵を描き始めたんだ・・千雪の可愛い仕草の全部を・・描き留めておきたかったから」
「・・圭人」
圭人は今まで見た事もないような優しい目で私を見てた。
「千雪が俺と同じ学校を受験してくれた時は本当に嬉しかった。・・千雪が傍にいない一年は・・寂しかった。ありがとう千雪・・俺を追っかけて来てくれて」
私の手に温かい雫が落ちていた・・不思議だ・・今日の涙は何故か温かかった。
圭人の言葉は・・嬉しくて・・切なくて・・後から後から涙が溢れた。
「俺・・今までもこれから先も・・千雪しか描けない。俺の目には千雪しか映せないよ。・・だから千雪、俺に千雪を描かせて」
止まる事を知らない私の涙を圭人はさっきと同じように・・優しく拭ってくれていた。
圭人の言葉に色んな迷いや不安が消えていった・・何も気付いてなかったのは私だった。
「・・圭人・・私の気持ち知ってたの?」
「クスッ、言ったよね・・俺の方が千雪より千雪の事・・知ってるって」
圭人の綺麗な顔がゆっくりと私の頬に近付いて・・・触れるだけのキスをした。
なんだか・・予感がした・・これから始まる甘い恋の予感が。
――End――
最初のコメントを投稿しよう!