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「俺、今度、美術部の部長になった」 お昼休み・・何時ものように圭人と裏庭でお昼を食べていた時・・圭人が言った。 「・・そうなんだ」 圭人は私の一つ年上で幼馴染みだ。 私達の通う学校はこの辺ではちょっとは名の知れた私立高校だ。 学校の偏差値のレベルも高ければ学費も高い。 即ち・・学力があってお金がなければ入れない学校だ。 校舎の外観はどこぞのテ―マパークのお城みたいに豪華で制服はデザイナーズブランドのものだ。 巷では憧れの学校なんて噂されていた。 「・・じゃあ・・今までより帰りが遅くなるの?一緒に帰れなくなるの?」 ショックだった・・・必死で勉強して圭人と同じ高校に入れたのに。 「う・・ん・・そうだね・・今までよりは美術室にいる時間は長くなるかもね」 圭人と学年が違う私が圭人と一緒にいられるのはお昼休みと登下校する間だけだ。 なのに・・学校に入学してたったの二ヶ月で一緒に帰る事も出来なくなるなんて―― 「ん?千雪どうした?急に元気なくなったけど・・お腹でも痛くなった?」 「むぅ・・もう、なんでそうなるかな?お腹なんて痛くないよ」 圭人と一緒に帰れなくなる事でショックを受けてるのに圭人の能天気な言葉に腹がたった。 ・・やっぱり・・そうだ。 好きという感情があるのは私だけで圭人にとって私は只の幼馴染みでしかない。 私は物心つく頃からずっと圭人が好きだった。 家が隣同士で母親同士が仲がいい事で殆ど毎日のようにどっちかの家で一緒に過ごしてた。 圭人は小さい頃から優しかった・・・私の我が儘を何でもきいてくれた。 中学までの圭人は細身で顔も女の子みたいで背も私よりほんの少し高いだけで中性的で可愛い男の子だった。 高校に入学してから急に背が伸びた・・きっと180センチ近くはあると思う。 可愛いらしかった顔も綺麗系イケメンに変わった。 この学校に入学して驚いた・・圭人は学校でかなりモテてた。 ・・私の知らない・・圭人がいた。 入学早々、学年の違う私のクラスの女子の間でも噂される程、有名人だった。 「千雪、明日から暫くお昼、一緒に食べれない・・前の部長からの引継ぎがあるんだ」 なんだか・・予感がした・・圭人の傍にいられなく日がくる・・そんな予感が。 「・・うん・・分かった」 「あ・・昼休み、後、15分だね・・千雪、悪いけど今から部室に行かなきゃなんないんだ・・先に行くね」 圭人は私の返事も待たずにさっさと部室へ行ってしまった。
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